音楽配信のディストリビューターとは？利用するメリットや選び方を解説

2025.12.04

目次［］

音楽配信の選択肢の多様化や、音楽配信業務の複雑化が進むなか、「ディストリビューター」の存在が注目されています。ディストリビューターが提供するサービスを利用すれば、アーティストやレコード会社は音楽配信にかかる負担を軽減可能です。

この記事では、音楽配信のディストリビューターの概要や利用するメリット、選び方のポイントなどを解説します。現状の音楽配信業務に少しでもお悩みがある方は、ぜひ参考にしてください。

音楽配信の「ディストリビューター」とは？

音楽配信のディストリビューターとは、アーティストやレコード会社などに代わって、楽曲をさまざまなプラットフォームに配信してくれる仲介会社のことです。ディストリビューターによるサービス内容は、「音楽配信代行サービス」や「音楽ディストリビューションサービス」などと呼ばれています。

ディストリビューターを介した音楽配信先のプラットフォームの代表例は、以下のとおりです。

Apple Music
Spotify
Amazon Music
YouTube Music

アーティストやレコード会社がディストリビューターに楽曲を登録すると、ディストリビューターは提携しているプラットフォームに楽曲をアップロードします。その後、楽曲の再生回数やダウンロード回数などに応じて発生した収益を、契約内容に基づいてアーティストやレコード会社に分配するという仕組みです。

ただし、細かいサービス内容はディストリビューターによって異なり、無料のものから有料のものまで利用形態にも違いがあります。特徴を比較検討し、自社に合うディストリビューターを選ぶことが大切です。

なお、音楽配信の仕組み・やり方といった基礎知識については、以下の各記事で解説していますのでぜひ参考にしてください。

音楽配信の仕組みとは？リリース方法や配信方式をわかりやすく解説

音楽配信でディストリビューターを利用するメリット

前章で紹介したとおり、現在では多種多様な音楽配信プラットフォームが存在します。

プラットフォームごとに手続きをしたり、ケースによっては多言語化の対応をしたりするなど、楽曲を配信したいアーティストやレコード会社にとっては負担が大きいでしょう。プラットフォーム側から見ても、無数のアーティストの楽曲を個別に管理するのはコストがかかります。

そのようななかでディストリビューターがいれば、アーティスト・レコード会社とプラットフォームをつなぎ、双方の負担を軽減可能です。

アーティストやレコード会社は、世界中の幅広いプラットフォームに一括で楽曲を配信できるようになり、以下のようなメリットも生まれます。

これまでに出会えなかった新規リスナーを獲得できる
アーティストや楽曲のプロフェッショナル性が高まる
継続的な収入源になり得る

さらに、ディストリビューターには配信手続きや収益管理などの実務も代行してもらえるため、アーティストやレーベルは「作品づくり」「ブランディング」「プロモーション方針の設計」などのコア業務に集中しやすくなるという点も大きなメリットです。

音楽配信のディストリビューターの選び方

一概に、「知名度の高いディストリビューターが優れている」とは限りません。大切なのは、自社が重視する点から各ディストリビューターとの相性を見極めることです。

ここでは、ディストリビューターを選ぶ際にチェックしたいポイントを解説します。

配信費用

ディストリビューターを介して楽曲を配信するのにかかる費用には、以下のようなパターンがあります。

【無料】

完全無料で配信できる

【有料】

都度課金型：シングルやアルバム単位で初回登録料のみがかかる
サブスクリプション型（1）：シングルやアルバム単位で月／年会費が発生する
サブスクリプション型（2）：アーティスト単位で月／年会費が発生する

配信費用が完全無料のサービスは、収益還元率が低い傾向です。「配信費用が安ければ安いほど良い」というわけではない点に注意しましょう。

サブスクリプション型の場合は、月額または年額で費用が発生します。アーティスト単位でサブスクリプションが発生するパターンは、楽曲を頻繁にリリースする方に向いているでしょう。

収益形態・還元率

音楽配信先がストリーミングサービスの場合は、楽曲の再生回数に応じて収益が発生します。一方で、配信先がダウンロードサービスの場合は、ダウンロード数に応じて収益が発生するのが一般的です。

これらの収益は、一度ディストリビューターが受け取り、契約に基づきアーティストやレコード会社に還元されます。その際のパターンは、大きく分けて以下の2つです。

100％還元される
手数料などを差し引いた金額が還元される

手数料などを考慮した収益還元率は、60％程度から90％程度までと、サービスによって大きく異なります。したがって、配信費用と収益還元率のバランスを見て検討するとよいでしょう。

なお、以下の記事では、音楽配信の収益を最大化するためのポイントなどを解説しています。こちらも併せて参考にしてください。

音楽配信で収益を得る方法と収益最大化のポイント｜おすすめの配信支援ソリューションも紹介

配信先のプラットフォーム

Apple MusicやSpotifyといった主要な音楽配信プラットフォームは、どのディストリビューターも網羅していると考えられます。

そのうえで、狙うマーケットが国内なのか海外なのかによって、配信先の選択肢のなかにどのようなプラットフォームが含まれていると良いかが変わってきます。例えば、世界を見据えているなら、海外で流行っているプラットフォームでの配信の可否をチェックする必要があります。

また、InstagramやTikTokなどのSNSでの音楽配信に対応しているかも重要なポイントです。SNSに配信された楽曲を使って誰かが動画を作成してくれれば、一気に認知が広まる可能性があり、新鋭のアーティストが躍進するきっかけになるでしょう。

配信開始までにかかる期間

ディストリビューターを通じた音楽配信は、手続きが済めばすぐにできるというわけではありません。楽曲を登録してから数日で配信が開始されるケースもあれば、1ヵ月以上の待ち時間が発生するケースもあります。

また、ディストリビューター側では音楽配信時に審査を行なうため、審査の状況によっては配信開始までの本来の予定日数から前後することもあるでしょう。アーティストやレコード会社が余裕を持って手続きをすることはもちろん大切ですが、待ち時間の目安も事前に把握しておく必要があります。

プロモーション活動の支援

リスナーを増やし、ファンを獲得していくためには、楽曲の配信に加えてプロモーション活動が不可欠です。

ディストリビューターによっては、音楽配信手続きの代行だけでなく、プロモーション機会の創出をサポートするサービスを提供している場合もあります。例えば、以下のような支援が挙げられます。

配信プラットフォームへ楽曲を提案（ピッチ）し、プレイリスト掲載の機会をつくる
プラットフォーム内のバナー掲載や特集枠への露出機会を調整する
SNS施策やフィジカル（CD・レコード）販売施策と連携したプロモーション計画を支援する

このようなサービスは、プランに最初から組み込まれているパターンと、追加費用が発生するパターンがあります。

ほかにも、ディストリビューター独自のサービスとしては、楽曲のアナリティクスデータをもとにしたアドバイス提供や、楽曲制作のサポートなどが挙げられます。

日本語への対応

海外発のディストリビューターは、日本語に対応していないことも珍しくありません。通常の配信手続き時のほか、トラブルが発生した際にも、英語などでのやりとりが求められます。

また、費用や収益に関することも、円単位ではなくドル単位などになるでしょう。世界のマーケットを狙い、海外発のディストリビューターを利用したいと考えている方は注意が必要です。

負担なく音楽配信をするためには、日本語に対応していて海外への配信も可能なディストリビューターを選ぶのがおすすめです。

ディストリビューターを利用して音楽を配信する際の注意点

続いて、実際にディストリビューターを利用するにあたり、知っておきたい注意点を解説します。

収益の受け取りにかかる手数料

先述のとおり、海外発のディストリビューターを利用する場合は、外国の通貨での取引になることが想定されます。

例えば、米ドルで発生した収益を日本円に両替して引き出す際には、為替手数料が発生します。その結果、手数料の分だけアーティストやレコード会社の取り分が減ってしまう点がデメリットです。

また、日本のサービスであっても、収益を引き出すたびに手数料が発生するケースもあります。そのため、手数料がどれくらいかかるかを把握しておくと安心です。

音楽著作権の管理

楽曲の著作権は、アーティストが楽曲を制作した時点で自動的に発生するものです。アーティストには、楽曲の配信・複製・展示・演奏などをコントロールする権利があります。

著作権侵害が起こりやすいデジタル時代において、ディストリビューターは、楽曲の著作権を管理し侵害を防ぐ役割も担っています。

また、ディストリビューターのなかには、著作権に関する登録や申請手続き（いわゆる作品登録）を代行してくれるサービスを提供しているところもあります。これにより、アーティストは配信に必要な手続きをスムーズに進めやすくなります。ただし、どこまで支援範囲に含まれるかはサービスによって異なるため、事前に確認しておきましょう。